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ふんわりした胸に重みを抱き締め包む、白い枕は涙によって乾く間も無く濡れそぼり、
水に満ちた小さな池に、悄々と細かに震える透糸の雫は、まだまだ降り止みそうにない。
頭の傍に居てくれている三〇 糎程の仔猫のぬいぐるみの手を握ると、
池の横に座す柳の枝葉が、手の平に応えるは白綿に包まる温もりと、戯れに撓う確固な弾力。
眉を顰めて皴二溪、
千尋谷に鶯の谺。
夜に雀が鳴くのだろう、部屋の外での千代千代囃、
谷は鳥達の住居のようだ、井戸端会議に蝶は居ないか。
車を洗うホースの水、アスファルトへの打水の音、
滝の飛沫がちらと瞬いてはぱっと白く燃え立ち煙のようにすっと消える。
首だけ少し横向けて、ぬいぐるみの方を振見ては、
露滴りそうにしっとりと、柳は頭を垂らしつつ、おいでおいでと招くように、嬌る細指揃えた手で、すっと導くは池の彼岸、谷の奥、白地に浅葱、黒、金色の、縫取り咲かした天守閣、雨の白靄の薄ぎぬ重ね、遠く霞と漂い浮ぶ。
空いている片手はベッドの柵にひやっと染みて、
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