新宿

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新宿

新宿の街並みは、いつ見ても鮮やかだと思う。天を刺す楼閣の数々、灰を巻き込んだような大気、目眩のするほど溢れかえる人々。そうして、その一人ひとりの面影が、煙草の煙で霞んでいく様。疲れたような横顔、酒気。そんな雑多な物と者とが圧縮されて、一つの街が形成されていく光景。電灯の明かり、モノクロニズム、リアリスト。ガード下のホームレス達、山手線、歌舞伎町。何の関係もなかったモノ達が寄り集まって、一つの楽園が構築されていく光景。 綺麗、という言葉は、果たしてこの街に合うのだろうか。いや、きっと綺麗なのだ。私が今踏みしめているアスファルトも、死んだようにひなびている吸い殻も、この現代社会という理念に照らし合わせてみれば、綺麗の一言で括られてしまう。それが人の幸福で、誰かの為に誰かを蹴落とすことが美談なのだとすれば、それは多分、そういう事になってしまうんだろうと思う。 私は。 私は、どうしようもない。     
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