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10手を繋ぐ
歩き疲れた彼は
湖のほとりに腰をおろした
彼は空を見るのが好きで
光る粒と大きな丸を
今日も眺めていた
水の音が心地よく
彼の瞼はくっつきそうだった
その心地よい世界は真っ黒に
意識が遠くなる感覚…
誰かが目の前で笑っている
暖かな光
優しい香り
彼は自分がわからない
その誰かもわからない
ただ ただ 心地よい関係
この時間は
一人ではない
確かに誰かが側にいる
とても懐かしく
とても大好きで
笑ってくれている
不思議と自分も笑っている
手を伸ばす
上へ上へ
手を伸ばす
触れそうになる
手へは届かない
ふと上を見ると
その手の主は悲しそうな顔をした
突然暖かい光が
黒くなり
下へ引っ張られた
気がつくとさっきの湖のほとりだった
真っ暗な湖に
揺れる光る粒と大きな丸
湖が空を真似て出来た光
その中の揺れる自分
この世界には自分しかいない
もしも目覚めなければ
暖かい世界
優しい光に包まれて
急いで瞼を閉じてみた
真っ暗な世界にはなったが
真っ暗なだけだった
意識が遠くなる感覚が必要なのだと
認識した
また空を見上げ動かない
光る粒と大きな丸を眺めていた
どうしても戻りたかった
暖かく優しい世界
そしたら
手を繋ぐ
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