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8食べたい 食べられない
二本足で立つ者達は
彼を囲んでいた
彼は顔を上げた
仲間だと思っていた者達は
仲間ではなかった
二本足で立ってはいるが
自分のそれとは違っていた
身体も毛むくじゃらだった
その者達は
彼の匂いを代わる代わる嗅いできた
クンクンクン…
嗅いだあとほとんどの
毛むくじゃらは
首をかしげていた
そして目の前で
口論のような事をしたり
暴れたりしていた
どうやら彼を食べたいのだが
食べれなさそうで
イライラしているのだろう
彼は体から紫色の煙を出していたのだ
とても食べれそうではない
毛むくじゃら達も食べれないのならば
無駄な殺生はしない
それで解放するかどうかを
悩んでいたのだろう
すると首をかしげながら
小さな毛むくじゃらの子供が彼に近づいた
そして彼の体の匂いを嗅ぎ
「ウキキキキキッ!!」
笑ったような声で叫んだ
すると周りから
「ウキキキキキ!!」
「ウキッキッ!!」
大勢の毛むくじゃら達も
笑ったような声を出した
するとリーダーのような
毛むくじゃらが
牙で縄を切った
ドスン!
その場で彼は下に落ちた
リーダーはまだ牙を見せている
顎を突き出し
森の方を指した
向こうへ行けということらしい
それは彼もなんとなくわかった
毛むくじゃら達から食べられそうになり
毛むくじゃら達から食べられず
毛むくじゃら達の子供から助けられ
毛むくじゃら達から森へと追い出された
どうせなら食べてくれれば良かったのに
彼はまた1人になった
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