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ファウスト達は仲間で友人だが、この距離ではない。もう少し離れていて、時々迫るように近い。常に、近くに感じるわけではない。
「やはり、嫌ですか?」
「いや、違う!」
寂しそうに言われて咄嗟に否定した。否定して、思った。クラウルもまた、手放しがたいのだと。
「嬉しいと思うんだ」
「嬉しい?」
「こうして、近くにいてくれることが。お前との会話や距離は心地よい。俺は……こんなに近く人を感じる事がなかった。だから、距離感に戸惑うんだ。踏み込んでいいのか、いけないのか…少し臆病なのかもしれないな」
人との距離を測るのが苦手だ。
近づきたい相手には、近づいてもらいたい。せめて、受け入れてほしい。
最近…年始の頃から少しずつ、こんな気持ちを感じるようになった。仕事で疲れた時、思い悩む時、それを口に出せればどれほど楽になるか。誰かが一緒に背負ってくれれば、いいのに。
そう思う時、必ず最初に出てくるようになったのがゼロスだ。
彼は口外しないと信じている。それに、情けない時にはきっと叱るだろうと思った。だからこそ、求めたのだ。
ゼロスは立ち上がり、隣に腰を下ろす。そしてニッと笑った。
「この距離が、俺と貴方の距離です」
「!」
ほんの少し動けば触れられる、そんな距離だった。
「こんなに、近くていいのか?」
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