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近くにあること(クラウル)
安息日前日の終業後、クラウルは私服に着替えて門へと出ていた。
髪を下ろし、ラフな格好で待っていると直ぐに待ち人はきた。薄いベージュのズボンに同系色のコートを着ていると印象が柔らかい。
「すみません、お待たせしました」
「いや、大したことじゃない。行くか」
「はい」
ゼロスを隣に街へと降りていく。その心は、少しばかり軽やかだった。
街は安息日前日とあって賑やかだ。人の通りも多いだろう。
雑踏の中をゼロスは迷いなく歩いていく。どこか目的があるような足取りで、ゼロスはラセーニョ通りから少し入った場所へと向かっていった。
「店は決まっているのか?」
「えぇ、予約しました。少し行った所です」
そうなると、少し服装をミスったか。そう思うが、当のゼロスもさほど変わらない格好だ。間違いと言うわけじゃないんだろう。
そうして少し狭い道を進んだ先、小さな間口の店の前でゼロスは立ち止まった。
「ここです」
こじゃれた店は小さな扉だけで、他に出入り口がない。入って直ぐに階段があり、登っていくと受付の人がいた。名を告げて案内された個室は、温かな感じのする過ごしやすい場所だった。
「飲み物と料理を決めましょうか」
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