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ゼロスがそっと伸び上がって、唇に触れる。噛みつくような強引さのあるキスは、すぐに舌を差し込んでくる。
それに、クラウルは応じた。互いを貪るように最初から激しく絡め合うキスに、熱が生じる。たまらず、クラウルは片手でゼロスの頭を引き寄せた。そしてより深くを探るように差し込む。飲み込み切れない唾液が口の端からこぼれていく。
離れた時には、少し酸欠気味だった。ゼロスの頬にも自然、赤みが増したように思う。
彼は溢れたものを腕でグッと拭うと……何故か恨みがましい目で睨んできた。
「あの、お付き合いの経験はないのですよね?」
「ない」
「…遊んでらしたんですか?」
「いや?」
「…何でこんなに上手いんだ」
カッと赤みが増していくゼロスを、クラウルは察し悪く眺めている。普段は相手の心理を探る事に長けているというのに、ここではゼロスが何を言いたいのかサッパリ分からなかった。
「ゼロス?」
「…キスが上手かったので、経験がない訳じゃないんだと…」
視線を大幅にそらし、俯き加減に言ってくる事にクラウルはようやく理解した。そして平然と言ってのけた。
「仕事だからな」
「仕事?」
俯けていた顔が上がり、ゼロスはマジマジとクラウルを見る。クラウルはそれに、ニヤリと笑って頷いた。
「暗府は潜伏し、情報を得る事が仕事だ。つまりは…」
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