近くにあること(クラウル)

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「コースじゃないのか?」 「えぇ、単品です。適当に頼んで構いませんか?」 「あぁ、構わない」  ゼロスがワインと数種類の料理を注文する。飲み物は比較的すぐに、簡単な料理も早い段階でテーブルに並び、クラウルは乾杯をしてワインを飲み込んだ。 「いいワインだな」 「料理も美味しいそうですよ」  柔らかなラグの上に直に座る席は、意外と距離が近い。楽しげに笑ったゼロスが焼き鳥を手にワインを飲んでいる。確かに料理も美味しい。 「良くこんな場所を知っていたな」 「レイバンが教えてくれたんですよ。あいつ、ジェイクさんと一緒にこうした店を回っているらしくて、穴場だと教えてくれました」 「ほぉ、意外だな。同室とはいえ、ジェイクは少し壁のある奴だ」 「付き合ってるみたいですよ」 「!」  驚いて、飲み込んだワインがおかしな方向へ流れ込んで咽せてしまう。  立ち上がったゼロスが背中を軽く叩いて、なんとかこみ上げる咳を押さえ込んだ。 「そんなに意外でしたか?」 「…意外だ。ジェイクはそうした話しを聞かないし、料理馬鹿だから」 「結構前から、互いに少しは意識していたようですよ」 「そうだったのか…」     
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