370人が本棚に入れています
本棚に追加
そしてそんな自分の感情にも困惑している。
自分はどう反応してほしかったのか。安堵の表情か、それとも嬉しそうな反応か。
それを見たいという気持ちは、クラウルこそがゼロスを求めるからじゃないのか。
「ゼロスは、いるのか?」
「え?」
思わず聞いた。そして聞いた後で、視線をそらした。
求める答えは一つだが、違った時には僅かに痛む気がした。
そもそもゼロスは後輩からも同期からも慕われている。徐々に頭角を現している。静かに、だがしっかりと面倒を見るし、付き合いもいい。そんな人物は大抵がモテるものだから。
ゼロスはマジマジとクラウルを見ている。窺うようなその視線と空気にどうしたらいいのかと少し後悔し始めていた。
「いませんよ」
「え?」
「今にして思えば、本気かと問われるとなんとも言えません。楽しい事を共有する相手も、関係のあった女性もいますが結婚まで考えたかと言われると疑問です。多分、そこまでじゃありませんでした」
なぜかほっとしたのは、そのままゼロスがフリーである事を確認出来たからだろう。自然と、それが出ていたようだ。目の前でゼロスが笑う。
「そんなに気になりましたか?」
「あぁ、いや…」
「それは、貴方は俺に少なからず気持ちがあると取っても、差し支えないのでしょうか?」
最初のコメントを投稿しよう!