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荒野の覚悟
旅人はひどく疲れ果てていた。
もう何日も食べ物を口にしていなかったし、最後に人を見たのも、何十日も前のことであった。
だがそれ以上に旅人に異常な徒労感を与えたのは、彼の眼前に広がる、終わりのない荒野の景色であった。
大地一面にその生命の輝きを煌めかせる青き草の群衆と、ちっぽけさを感じさせる、雄大な山々。
それくらいしかこの旅を始めてから目に映らないものだから、男の頭は、まるで何もない真っ白な部屋に監禁された、冤罪の囚人のように段々と限界に近づいていった。
少しでも気分を変えようと、バッグから水筒を取り出す。
一昨日の雨水を口いっぱいに含め、それを吐き出す。
もったいないのはわかっているが、こうでもしないと人間としての尊厳を失いそうになる。
かと言って別段旅人が誇らしい人間と言われれば、決してそういうわけではない。
彼が旅を続ける理由、それは多分、現実逃避のそれと同じことであった。
夢で見たただ一本の木を、それは桜の木かもしれないし、梅の木かもしれないが、それをなんのあてもなく探しているのだ。
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