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一つ、それは未来へと歩みを進める勇気。
一つ、それは絶望感を与えられた彼らへの尊敬。
一つ、それは人生を問い詰める信念。
その一つ一つが混ざり合わさって、男に不安感を押し付けた。
だがそれは決して負の感情ではない。
「背水の陣」に近い、命をも投げうる覚悟であり、不安定さを確立させて安定させようとする覚悟でもある。
だからこの旅を始めてから、男は今まで感じたことのないような、異様な集中力に駆られていた。
そして今現在。
陽は沈みかけ、あたりからコオロギのような虫たちの鳴き声がちらほらと聞こえ始めた。
でもそんな希望の光が沈みゆくのを無視するように、旅人は拳に力を込め、全身で再び「覚悟」を感じた。
まるで、自分が太陽になったと言わんばかりに。
足は痛み、皮は日に焼け、空腹が思考を支配しても、それでもなお男は、前へ歩み続けた。
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