429人が本棚に入れています
本棚に追加
/287ページ
7月中頃。
神戸に戻って来て3度目の夏休みが始まろうとしている頃、明日香は東京へ行くために、新大阪駅に来ていた。
以前勤めていた会社の同期で、大学からの友人でもある山崎樹里の結婚式に招待され、出席する為だ。
(5月に兄ちゃんの結婚式あってんけどなぁ。)
5月のゴールデンウィークを過ぎた頃、明日香の兄 孝雄がようやく結婚した。
終始、和やかな雰囲気の良い式だった。
遥香と斗真は初めて結婚式に参加するので最初はどこかソワソワした様子だったが、横須賀に住む従妹の希と楓と正月ぶりに再会してからはしゃいでいた。
(神戸に住んでんのに神戸牛とか滅多に食べへんのよねぇ。美味しかったな〜。)
兄の結婚式の料理を思い出した。
駅構内のコンビニでコーヒーとミネラルウォーター、お菓子を買う。(ビールは帰りの新幹線で、と決めている。)
明日香は改札を通り、ホームへ向かう。
(そういや、新幹線に乗るのって……2年半ぶり?東京から神戸に戻って来て3回目の夏休み…。
うん、やっぱり2年半ぶりやわ!)
明日香は改札を通りホームへ向かう。
後、10分で新幹線が到着する。
明日香は樹里から送られた招待状を改めて確認する。
(つか、世間って狭っ!樹里の旦那さんがまさか、お兄ちゃんの部下とはな〜。)
樹里の夫となる望月慎吾は明日香の兄 道雄の部下に当たる。つまり、海上自衛官であるわけだ。
(樹里のお兄さんの紹介で知り合った言うてたな。そういや、樹里のお兄さんも海自やったな。)
ホームに新幹線到着のアナウンスが流れる。
招待状をカバンに大事におさめ、キャリーケースを持って、到着したばかりの新幹線に乗り込む。
時刻は14時。時間帯のせいか、スーツ姿のサラリーマンやOLが目立つ。
指定席に着くと、キャリーバックとその他の荷物は座席の上の荷物棚に乗せる。
キャリーバックを乗せようと手こずっていると、通路の向かい側の2人のサラリーマンが手助けしてくれた。
2人にお礼を言い、明日香は席に座ると新幹線は動き出した。
暫くはボンヤリと外の景色を眺めていたが、如何せん、日本の新幹線はトンネルが多い。
京都を過ぎた辺りで明日香は持って来たタブレットをカバンから取り出し、イヤフォンを装着する。
契約している動画配信サービスのアプリを起動して、いま話題のアニメの最新話を見る事にした。
隆平が書いた小説を原作にしたもので、何度か話題に出ているヴァンパイヤの少女と成り行きで旅を共にする事になった2人のハンターの物語だ。
主人公の少女を演じるのは、人気声優の勝矢真希。
先週、由希奈と一緒にアニメショップへ行った際に流れた小説が書籍化のPR動画で出演していた。
PR動画では、如何にも"可憐な乙女"と言った感じだったが、いま視聴しているアニメの主人公との演じ分けに脱帽する。
あざとく山賊どもを手玉に取ったかと思えば、バトルでは圧倒的な力を見せつけ敵を薙ぎ倒す狂戦士。見た目年齢だけだと連れのハンターたちの方が上なのだが、長い年月を生きていた年長者らしく諭す場面など、同一人物なのだろうか?と思わざるを得ない。
最初のコメントを投稿しよう!