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乾杯もそこそこに各々鍋をつつく。
「悠里さん、これ美味しいです!」
「ホンマー?良かったー。」
山芋をつなぎで少し使っているので、メインの鶏団子はフワフワだ。スープもレモンの酸味と鶏ガラ、塩味が効いていておいしい。
遥香と斗真も味噌鍋が好きなんだろう、よく食べている。
「豆乳って独特の匂いがあるから苦手なんスけど、全然匂わないですね。豚肉が脂っぽくないしサッパリしてる。あー…白味噌がいいコクになってる。」
何だかグルメリポーターみたいな感想を述べる順一の隣で洋子は機嫌よくビールを呑んでいる。
鍋を食べはじめて少ししてから、3階の住人である萬代彩子と椎名大輔が老舗デパートの袋を持ってやって来た。
どうせ酒はしこたま用意されているだろうから、食後のデザートを買ってきたという。
「明日香ー、久しぶりやなー。」
「………彩子先生、全く変わってないですね。」
椎名さん更に渋くなってるやん。
ヨーコさんもそうやけど、彩子先生といい、椎名さんといい……ある程度の年齢きたら老けへんのか?
「サヤコ先生と椎名くんはビールでええのかな?」
「あ、奥さん。俺ハイボール貰っていいですか?あります?」
「あるよー、ちょっと待ってなー。」
ふと、隣から視線が感じたので見てみると、斗真が塩レモン鍋に興味津々だった。子供には少し早い気がするのだが…。
「斗真、ちょっと食べてみる?鶏団子美味しいよ。」
「うん!豆腐も食べたい!
じゃあねぇ。明日香ねえちゃんコレどうぞ!」
斗真は明日香にズイっとお椀を出してきた。
中には椎茸が入っていた。
さてはこいつ、椎茸嫌いやな。
自分の小鉢に鶏団子と豆腐を取り、斗真に渡す。
ふうふう、と冷ます度に斗真の赤いほっぺが膨らむので、思わず突くと、斗真はくすぐったいのか、身をよじった。
明日香も斗真から受け取ったお椀から先ずは椎茸を箸で取る。
うん、味が染みてて美味しい。油揚げもいい感じだ。
ああ、懐かしい…。油揚げ争奪戦なるものが、幼い頃よくあった。
1番上の兄である道雄がよく明日香に譲ってくれた。自分も好きなクセに。
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