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「もういっその事、管理人さんやったら?おっちゃんもおばちゃんもええ歳やろ?」
「管理人さん??」
「この2週間あんた見てたら定期的に掃除したり、メンテナンスしたりしてるやん。」
「管理人さんねぇ…。」
「ええと思うよー。ただ、事務的なことは分からんけど。」
うーん、と腕を組んで考えている明日香を見ながら、菜生は"じゃあね〜"と軽い感じで手を振り家に帰っていった。
その日の夜、両親に何となく聞いてみると、思っているより2人とも乗り気だった。
「俺らも歳も歳やからなぁ。昔みたいに身体が動かんのや。各階の電灯変えるのも一苦労やで。」
「そうよねぇ。書類関係もよう分からんから全部、委託さんに丸投げしてる状態やし。」
「連絡入れとくから行ってこい。」
父が何やらメモをして明日香に見せた。
住所と会社名、そして携帯の電話番号。
関口ハイツの管理会社だった。
何かアッサリと再就職先が決まりそうな……。
次の日、父に言われて管理会社に行くと、とんとん拍子に明日香が関口ハイツの管理人になることになった。
いいのか?こんなアッサリ…と思ったのだが、これでニートから脱却出来るならいいだろう、と思った。
その管理会社からマンション管理士とか宅建の資格は取ってた方がいいんじゃない?と提案されたので、本屋に赴き、関連の本を購入してみた。
読んでみたがサッパリだ。やっぱり専門学校とか行かんとアカンのかなぁ…。
「はぁ…。」
喫茶コスモス。カウンターで父が淹れてくれたカフェオレを飲みながら、買ってきた宅建の本を読んでいるが、やっぱり分からん。
明日香は思わず溜め息を吐いてしまう。
「おーい、若者がなに溜め息吐いてんねん。」
いつの間にか隣には大輔がいた。
相変わらず男前なオッサンやな。声も無駄にええから不覚にもドキドキしたやんけ。
「宅建?」
「はい。私、管理人さんを正式にすることになって。そしたら管理会社の人から持ってた方がええよって言われたんですけど。サッパリです。」
「まぁ、難しいやろうなぁ。いきなり見て分かる奴なんかおらんで。そんな焦らんでええんちゃう?」
「うーん…。」
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