No.10 カズ・フルーチェ&凪瀬夜霧

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【パターンB】凪瀬夜霧 老人は…空を見上げる。そこには無機質な銀のドラゴンが、今まさに大きな口を開け万の民を焼き尽くさんとしている。 老人は渾身の力を振り絞り、咆吼を上げた。 見る間に老人の体はドラゴンへと変化していく。老いた体は黒い鱗のある体に。背には皮膜のような翼を広げて。 悲鳴が上がるなか、老人は最後の力で空を舞った。 そして、鋼鉄のドラゴンの喉元へと噛みつき、同時に封じた力を解放する。 虚空へ突如現れる黒い穴は、老人と鋼鉄のドラゴンを飲み込んで無へと還していく。 だが、老人は最後に希望を見た。 あのエルフの少女が、呆然とこちらを見上げている。奴隷商の男が少女を見捨て逃げたのだ。 少女は自ら鎖を解き、混乱の中を逃げ出していく。 『これでいい…』 この命が、万の命を救えたのか。あのエルフの少女を救えたのか。 やがて闇に飲まれ消えていく二頭の竜。その後は、まるで何事もなかったかのようだ。 一人の老人の罪滅ぼしが町の人の命を救った事実を知る人は、誰もいなかった。 ー完ー 
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