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No.4 清水 空
わしは無力じゃ……。少年を助けるつもりが逆に救われてしもうた。
何が力もなきじゃ、わしの力なんぞただ破壊するのみではないか。この少年の用に護る力ではないではないか。
わしは……わしはどうすればいいんじゃ。
ただ、うなだれるだけのわしを時々行き交う人は不思議そうに見るだけじゃった。
ただ一人を除いては……。
「おじいさん。大丈夫?」
わしに声をかけたのだと気付くのに少し時間を要した。
顔を上げると綺麗な翠色に黄色い髪を一束に結った幼きエルフの女の子がいた。
その子はボロボロの服に首には首輪があり鎖の先には裕福な家であろう馬車が休憩をとっていた。
「はい、おじいさん。これ不味いかもしれないけどあげる」
その子はわしに硬いパンをまるまる一つくれた。
「よいのか? これはおぬしの……」
「いいよ。私のことは気にしないで」
そういい、儚く笑う少女。
「おい! なにおしている
そんな小汚ないじじに構わずとっとといくぞ!」
怒号と共に鎖を引っ張られ少女は顔を歪ませた。
「すいません」
少女はそう言うとわしに頭を下げた後、鎖の先にとぼとぼと歩みだした。
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