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No.5 カズ・フルーチェ
老人は、鎖に繋がれた彼女をかつての自分を重ねた。勇者に封印され、王城の地下の牢屋で何世紀も眠っていたドラゴン。──彼を解放したのは一人の青年だった。
厭世的で、こんな腐った世界は滅んじまった方がいいという愚挙を掲げた若い男。ドラゴンは彼の身に宿る事で封印から解放されたが、その男の精神が何処へ消え去ったのかは、当のドラゴンにも分からなかった。
──もし、今の私が あの男であるとするなら。彼女を封印から解いてやれるのが、私であるとするならば......
老人は若いエルフに向かって、手をかざした。固いパンが地面に転がる。
私は私を封印しよう、そして彼女に私を捧げよう──
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