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No.6 諫歩 鐵(いさほ てつ)
「おら、さっきから何ボサっとしてんだよ!とっとと歩け!」
エルフに鞭打つこの男は、奴隷商だろうか。せっかくのきれいな肌をみすみす傷物にするとは、商才のない奴だ。
「おい。その目は何だ。オレの言うことが聞けねえのか、ああ?」
どれだけ凄んだところで、彼女はもうここにはいない。少なくとも彼女の魂は、だ。
「マジで何だ、テメエ。しまいにゃ、不良品で殺処分にするぞ、コラ」
『やってみたらどうだ』
華奢な若いエルフの口から、あまりにも似つかわしくない濁った声が出た。
「……?」
奴隷商が眉間に皺を寄せながら、エルフの顔に自分の顔を近づける。
その、刹那。
「ぐあああああ!」
奴隷商は顔に手を当ててのたうち回った。エルフの口から吹き出た炎に焦がされたのだ。
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