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「まあそう怒る事はないだろう。仕事上の事なんだから。俺がどういう心境でここに来てるかは前にも話したろ。辛い仕事なんだ。くだらない事件も多いし、揉め事もある。血なまぐさい事態にも立ち会わなきゃならないんだ。その後に君のところを訪問する時だけ、人間らしい安らぎを感じているんだよ。何度も言ったじゃないか。時間がいつも遅くなるのは謝るよ。でもこんな深夜まで働きづめなんだ。わかってくれよ、な、メリッサ」
メリッサはその美しくも均整のとれた肢体をわがままに蠢かせながら、綺麗に整った、気の強そうな顔をこっちに向けて睨みつけてきた。
気の強さむき出しの凶暴な表情になっても、メリッサの顔は美しかった。
完璧に整った目鼻立ちのベストバランスから来る美徳に溢れた表情そのものだった。
スレンダーに痩せた、抜群のプロポーションから、こんもり大きく盛り上がった乳房のラインが、Tシャツに隠されてはいるが、十分はち切れんばかりになっているのがよく目立つ。
メリッサは体をくねらせながら、不服そうな顔をしていたが、タバコをふかすうちに少々落ち着いてきたのか、その表情に少し安らぎの色が出てきた。
「まあいいわ」
それだけ言うとメリッサは嘲りの表情のまま、ソファーに腰を下ろした。
俺は部屋の隅に行って、並んでいるバーボンやらスコッチの中からジャック・ダニエルを抜き出し、グラスに入れて氷を混ぜ、最後にソーダ水をたっぷり入れたハイボールを作って、メリッサの前のテーブルに置いた。
メリッサは、こちらにニコっと微笑んでからハイボールを口にした。
俺もジャック・ダニエルをロックで一杯あおったが、すぐには酔えなかった。
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