38人が本棚に入れています
本棚に追加
/64ページ
1 夜道・夕暮れ
夜道を走る。
といってもまだ夕暮れだが。
この道は、天気の良い昼日中にも車で飛ばしたことがある。
保安官としての職務を全うするために、この町を駆けずり回るのが俺の人生だ。
背中の大きな傷が時々痛む。
所詮、そんなこんなの日常の繰り返しで、人生なんか終わってしまうんだろう。
朝食のアップルパイとコーヒー、コーンスープと厚切りベーコン入り半熟エッグが腹にまだ溜まっているが、俺はそいつを、無理矢理ポットに入った熱いコーヒーで胃の奥に押し込めてやろうと、コーヒーをがぶ飲みしていた。
曇り空が車の見通しを悪くしていたが、俺は構わず走り続けた。
小さな荒れ果てた空き地のそばに、薄汚れたジーンズを履いて、チェックのネルシャツを無造作に着込んだトーマスの野郎がいた。
こっちに気がついて車を制止しようと手を振っていた。
俺はトーマスの真ん前で車を停めると、すぐさまトーマスの方へ向かった。
「何事だ?」
「あれを見なよ、保安官」
トーマスが指さした方向を見ると、そこには俺と同じ人間の、薄汚れた肉片が転がっていた。
荒れ地に、ただぶっ倒れている。
肉片に頭部はなく、腕も両方ともない。
胴体と二本足が、血まみれな状態で、そこに倒れていた。
最初のコメントを投稿しよう!