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──婚約か……。
フンっ。と文句を垂れながらも、やっぱりマリエは嬉しそうで、その顔を見ているともちろん私も自分のことのように嬉しいんだけど、少し複雑な心境だ。
それなりの交際年数を重ねてからの婚約。
……私も、こんな普通に憧れていたのに……。
「おはようございます!」
私たちの横を、部長が挨拶をしながら通り過ぎた。
その顔は、今朝の約束通り他人の顔。
「おはようございまぁす!」
こちらも、何食わぬ顔でマリエと二人で挨拶を返す。
マリエが部長の左頬の湿布について「どうしたんだろう?」と尋ねてくるけれど、「ホントだー。どうしたんだろうねー?」と、適当に相槌を打っておいた。
出社前、私たちのこの奇妙な恋人関係に、二人で決まり事を作った。
【その一 ・ 社内では、今まで通り他人として過ごすこと】
【その二・この3ヶ月は一種の試行期間とし、正式な恋愛感情が芽生えた場合のみ今後の関係を続けるものとする】
【その三 ・ 試行期間は性交渉は無しとする】
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