座敷童

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 ――頼之助と言うのですか、あなた。  「ええ、言っていませんでしたが」  ――何故、あの童は知っていたのですか?忘れている、とも言っていましたが。  心当たりがない訳ではなかった。  「…この屋敷は、元々は祖父のものでした。祖父が亡くなり、管理するものも居なかったのを私が引き取ったのですが」  ――昔、会っていたと?  「良く戯れた子が一人、居たような。幼子は判別が付きませんから、分からなかったのやもしれません」  そのために聞き覚えのある声だったのかもしれない。  「しかし、あんなに可愛らしい子だったでしょうか」  ――あなたの記憶が不確かなのやもしれませんが…。  真神は諭すようにこう言った。  ――大人になったあなたの前ですから、めかしこんだのでしょうとも。  「そんなものですか」  ――そんなものです。  呆れたように、彼女が溜め息を吐く。  ――物書きなのですから、女心を解せるようにはなるべきでしょうね。  実に難しい要求だ、と思いながら、私は腕組みをした。  これを話にしたためても良いものだろうか、と言うことがまず一つ。  もう一つは、社だ。  座敷童の社とは、一体どのような形なのだろう。
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