27人が本棚に入れています
本棚に追加
――頼之助と言うのですか、あなた。
「ええ、言っていませんでしたが」
――何故、あの童は知っていたのですか?忘れている、とも言っていましたが。
心当たりがない訳ではなかった。
「…この屋敷は、元々は祖父のものでした。祖父が亡くなり、管理するものも居なかったのを私が引き取ったのですが」
――昔、会っていたと?
「良く戯れた子が一人、居たような。幼子は判別が付きませんから、分からなかったのやもしれません」
そのために聞き覚えのある声だったのかもしれない。
「しかし、あんなに可愛らしい子だったでしょうか」
――あなたの記憶が不確かなのやもしれませんが…。
真神は諭すようにこう言った。
――大人になったあなたの前ですから、めかしこんだのでしょうとも。
「そんなものですか」
――そんなものです。
呆れたように、彼女が溜め息を吐く。
――物書きなのですから、女心を解せるようにはなるべきでしょうね。
実に難しい要求だ、と思いながら、私は腕組みをした。
これを話にしたためても良いものだろうか、と言うことがまず一つ。
もう一つは、社だ。
座敷童の社とは、一体どのような形なのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!