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座敷童
真神を祀る祠を建ててからと言うもの、かの古狼は屋敷に住まうようになった。
――気に入ったので。
祠の出来がお気に召したのだろうと理解した。僕も話し相手が出来るのは大歓迎と快諾した。それから十数日後のことだ。げんなりした声で彼女が言った。
――管理が杜撰なのではないですか。
原稿から顔を上げ、真神の方を見る。
「そうでしょうか」
――先程も鉛筆の買い置きがあったかどうか、探していたでしょう。
古狼は書斎の中を見渡した。随分散らかっているのは確かだ。最後に掃除したのは何時だったか。二月は前だったと記憶している。
――ここらで一つ大掃除でも。
「しかし、骨ですよ」
そう言うと彼女は、
「私もお力添えしましょう」
と言った。はて、いつもより声がはっきりと聞こえる。大気に溶け込むような淡い声ではなく、僕の鼓膜を叩く…肉声と言うのが正しいだろうか。振り向くと藍色の着流しを身に纏った、綺麗な女性が立っていた。袖をまくり、落ちてこないよう白の帯で括りながら、穏やかな琥珀色の瞳がこちらを見つめている。
「どうしました、不思議そうな顔をして」
「――いえ。そう言うことも出来るのだな、と感心してしまって」
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