座敷童

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 「何でしょう」  ――この屋敷、何か居ますよ。  僕は体を起こした。初耳だ。古い屋敷だ、不思議な話ではないが。  「妖しいものですか?」  ――害はなさそうです。大方ここの守り神か何かでしょう。  「しかし、今まで見たことも」  ――綺麗になりましたし、出て来る気になったのでは。挨拶に参った方が良いでしょうね。  道理だと思った僕は彼女に連れられ、奥の間へと向かった。何もない、広々とした部屋だ。そこに小さな童が座っていた。赤い着物を着、赤い花の髪飾りを付けている。しゃらん。顔が上げられ、眼が合った。  目元と唇には朱が引かれ、何とも似合っている。力のある眼をしていた。美しい少女だった。見たことはなかった筈だが、少女の方は僕のことを知っているらしかった。  ――随分と大層なものを引き連れているな。お前、斯様なものを飼い慣らす器であったか?  そう言って、口元だけを微かに歪めた。その声は、何処かで聞いたような気もした。不思議に思いつつ、僕は答えた。  「彼女はただの同居人ですよ」  ――ほう?  少女の眼が真神へと向かう。ふっと表情が和らいだ。  ――お主も古きものだな。由緒は、飛鳥か。随分遠い。  その言葉に、彼女も微笑み返した。     
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