第二場

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「あ、違うよ。 責めてるとかそんなんじゃない。 伊佐さんさえ良ければ、いつまでだってここに居ても構わないんだからね。 ほ、ほら、お茶を入れるから。 今年の桜は綺麗だね。山が桜色に染まって見える。」 「本当に綺麗ですね。 私は昔のことは覚えていないけれど、でもおせいさんと見るこの桜が、今までで一番綺麗に見えていると思います。」 「そうだね。 私も今まで見た桜の中で、伊佐さんと見る今年が一番綺麗に見える。」 「…。」 「伊佐さん?」 「おせいさん。 私はこのまま何も思い出せなくていいと思っているんです。」 「思い出せなくていいって…。」 「自分がどこでなにをしていた人間かわからないけれど、でも今は伊佐吉として毎日が積み重なっていく。これからもこうして伊佐吉として、日々を積み重ねていければいいと思うんです。」 「でも家族がいるんじゃないのかい? このまま一人で生きていくのは心細いだろう?」 「そのことなんですけど…。 あの、おせいさん、私と家族になってもらえませんか?」 「え?家族って…。」
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