第三場

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(おせいの家) 庭に咲いた桜の木の下で、おせいと伊佐吉が穏やかに話している。 「今年も桜が綺麗に咲いたね。」 「本当だね。 伊佐さんと出会って三度目、夫婦になってからは二度目だけれど、いつ見ても伊佐さんと見る桜は綺麗だ。」 「私もおせいさんと見る桜は本当に綺麗だと思う。 そうだ。 今日と明日はせっかく板場が休みだし、少しだけ遠出をしようか。 おせいさんは家に篭ってばっかりだし、たまにはどこかに出かけようよ。」 「いや、いいよ。 こんな私と外を歩いたら、伊佐さんまで変な目で見られる。」 「またそんなことを言って! いつも言ってるじゃないか。他の誰になんと言われようと、私は気にしない。 私たちは夫婦なんだし、堂々としていればいいんだ。」 「伊佐さんが気にしなくても、私が気にするんだ。私のことはともかく、伊佐さんが悪く言われるのは嫌なんだ。」 「おせいさん!」 「本当にいいんだ。どこへも行かなくても。 伊佐さんと過ごせるだけで、私は十分なんだよ。」 「やれやれ。 おせいさんは言い出したら頑固だからな。 じゃあ、今日と明日はおせいさんがして欲しいことをなんでもするよ。 おせいさんがしたいこと、私にして欲しいこと、何でも言ってごらん。 どんなわがままでも全部聞くよ。」 「わがままって子どもじゃないんだから。」 「いいじゃないか、たまには甘えてくれても。 それとも私はそんなに頼りないかな。」 「そうは言ってないけれど…。」
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