第三場

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「伊佐さん。」 おせいの静かな一声に、伊佐吉は我に返る。 「おせいさん!」 「行くのかい?」 「いや、私は…。」 「あなたは黙ってて! 妻とか言っていたけれど、あなたみたいな醜い人を新三郎さんが本気で好きになるわけないでしょう! どうせ困っている新三郎さんにつけ込んで、無理やり言わせたのね! それともお金? 人助けをして恩を売っておいて、後でお金を取ろうって言うんでしょ?! そんな醜い顔なんだもの、きっと心の中も醜いに決まっているわ。 さっさと本性出したらどうなの!」 「おとき!止めないか!」 新三郎は咄嗟に口にしていた。 「新三郎さん! 今、私の名前を呼んで下さったわ! 思い出したのね!よかった。さあ、帰りましょう。」 「い、いや、私は帰れない。 私はおせいさんが…。」 「まだこの女のことを気にするの?! わかったわ。この女に何か弱味を握られているのね。 お可哀想に。本当に醜い女だわ。」 「おせいさんを悪く言わないで…」 「ははっ。良かったじゃないか。 ああ、これでせいせいした。 こんなに長い間居座られたんじゃ、迷惑で仕方なかったんだ。 まったく。迎えに来るのが遅いんだよ。」 「おせいさん!」
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