10人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
嵐の晩、おせいは傘もささず急いでいた。
通りかかった桜の木の下で、なにかが動いた。
「誰かいるのかい?」
そこには身なりはいいが、酷く泥だらけになった男が倒れていた。
おせいは桜の上の崖を見て察する。
「峠から滑り落ちたのか。
しっかりおし。うちはすぐそこだから、そこまで頑張って歩いておくれ。」
細腕にどこにそんな力が眠っていたのか、おせいは男を抱えるように立たせると、腕が痺れるのにも構わず、時間をかけ家に連れ帰った。
最初のコメントを投稿しよう!