第一場

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(おせいの家) おせいが看病している。 「よかった。だいぶ熱は下がったね。」 「ん…。」 おせいは慌てて背を向けて立ち去ろうとする。 「ここは…。うっ。」 おせいは背を向けたまま答えた。 「熱は下がったようだが、まだ寝ていた方がいい。 そこに水と薬湯が置いてあるから、飲むといい。 粥もあるから、食べられるようならお食べ。」 「あの…」 「しばらくは動けないだろうから、家に手紙を出すなら、届けてもらうように人に頼んでくる。後で紙と筆を持ってくるから。」 「待ってください。」 「まだ何か?」 「あなたが私を助けてくれたのでしょう? 寝ている間ずっと誰かに看病されていたのは覚えているんです。 顔を見てきちんとお礼を言いたいから、こちらを向いてもらえないだろうか?」 「礼なんていい。 それに、私の顔を見たらせっかく良くなりかけたのにまた具合が悪くなる。」 「顔を見て具合が悪くなるなんて。」 「本当になるんだ。私は醜いから。」 「そんな。 あなたがどんな顔をしているか分からないが、こんなに良くしてくれた人を醜いなんて思ったりしません。」 「…後悔しても知らないよ。」 「ああ、よかった。こちらを向いてもらえて。 助けてもらい、本当にありがとうございます。」 「私の顔を見て驚かないのかい?このアザを醜いと思うだろう?」 「さっきも言ったけれど、こんなに良くして貰った人を醜いなんて思ったりしません。」 「変わったお人だね。私の顔を見て驚かない人は初めてだ。 助けた時の身なりがよかったから、どこかの商人かと思ったが、もしかしてお医者かなにかかい?」
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