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(おせいの家)
おせいが看病している。
「よかった。だいぶ熱は下がったね。」
「ん…。」
おせいは慌てて背を向けて立ち去ろうとする。
「ここは…。うっ。」
おせいは背を向けたまま答えた。
「熱は下がったようだが、まだ寝ていた方がいい。
そこに水と薬湯が置いてあるから、飲むといい。
粥もあるから、食べられるようならお食べ。」
「あの…」
「しばらくは動けないだろうから、家に手紙を出すなら、届けてもらうように人に頼んでくる。後で紙と筆を持ってくるから。」
「待ってください。」
「まだ何か?」
「あなたが私を助けてくれたのでしょう?
寝ている間ずっと誰かに看病されていたのは覚えているんです。
顔を見てきちんとお礼を言いたいから、こちらを向いてもらえないだろうか?」
「礼なんていい。
それに、私の顔を見たらせっかく良くなりかけたのにまた具合が悪くなる。」
「顔を見て具合が悪くなるなんて。」
「本当になるんだ。私は醜いから。」
「そんな。
あなたがどんな顔をしているか分からないが、こんなに良くしてくれた人を醜いなんて思ったりしません。」
「…後悔しても知らないよ。」
「ああ、よかった。こちらを向いてもらえて。
助けてもらい、本当にありがとうございます。」
「私の顔を見て驚かないのかい?このアザを醜いと思うだろう?」
「さっきも言ったけれど、こんなに良くして貰った人を醜いなんて思ったりしません。」
「変わったお人だね。私の顔を見て驚かない人は初めてだ。
助けた時の身なりがよかったから、どこかの商人かと思ったが、もしかしてお医者かなにかかい?」
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