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「医者…?商人…?」
「どうしてそんな不思議そうな顔をするんだい?自分のことだろう?
ああ、なにか話したくない理由でも?」
「いや、そうではないんだが…。」
「どうしたんだい?」
「私は…いったい誰なんだ…?」
「え?自分のことがわからないのかい?名前は?」
「名前…わからない。
私は、私はいったい誰なんだ?!」
「落ち着いて。
そんなに急に大きな声を出したら、身体に良くない。
自分のことが、名前も、わからないんだね?
なにか覚えていることはあるかい?」
「本当にわからない。
名前も、どこの人間でなにをしていたかもわからない。
あなたは私を助けてくれたが、知り合いというわけではないのでしょう?」
「ああ。
私は七日前の晩に、ここから近くの桜の木の下であんたが倒れていたのを見つけて連れて来たんだ。
ここは宿場町から少し離れたところにあって、近くに街道に繋がる道がある。
七日前の嵐は雨が酷かったから、峠で足を取られて滑り落ちてしまったのだと思うけれど。
もしかしたら宿場のどこかに泊まっていたのかもしれないね。
私は宿場に出入りできないから、少し時がかかるかもしれないが、あんたらしき人がどこかの店の台帳にないか調べてみるよ。」
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