第二場

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(おせいの家) おせいが木戸口の掃除をしていると、男の子が走った来て転ぶ。 「いてっ。うう、うわーん!」 「大丈夫かい? ここは道が悪いから走ったら危ないよ。」 「うわぁっ!」 「ほら、足を見せてごらん。 ああ、よかった。血は出てないね。 でも少し赤くなっている。痛いかい?」 「う、うん。ちょっと痛い。」 「大丈夫。 後で水で冷やせばすぐによくなるよ。」 「あ、ありがとう。おばちゃんは大丈夫かい?」 「え?」 「顔…痛くないのかい?」 「ああ、大丈夫だよ。おばちゃんは痛くない。 坊やは優しい子だね。」 おせいはそっと子どもの頭を撫でる。 するとそこへ子どもの母親らしき女がやって来る。 「うちの子になにするんだい!」 「私はなにも…。」 「嘘言うんじゃないよ! うちの子を食べようったってそうはいかないよ!」 「…。」 「おっかちゃん、違うよ。 おいらが転んだのを助けてくれたんだよ。」 「太郎坊は黙ってな! ここには近づいちゃいけないって言ってるだろ?! こんな醜い女は鬼か何かに決まってるんだ。 太郎坊は食べられてもいいのかい?」 「え?!食べられる?!」 「そうだよ、ごらん。恐ろしい顔だろ。 さ、食べられてしまう前に早く帰るよ。」 「あんた! 今度うちの子になにかしようとしたら、タダじゃおかないからね!」 おせいは、ただ小さくため息をつき、家に入ろうとした。
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