0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
ー雨だ。
今日は、あの子と約束した日。
ーさくら、散っちゃうかな。
「はぁ。」と小さく溜め息を吐く。
母さんに「溜め息なんてしたら幸せが逃げるよ。」なんて言われるけど、
今日雨が降ってる時点でとっくに逃げてると思う。
もうすぐ、約束の時間。
持ち物は、カメラと傘ぐらいかな?
濡れないようにしないと。
「行ってきまーす。」
いってらっしゃいの言葉を聞いてから街外れの公園に向かう。
公園につくと満開の、ではないが八分咲きほどの桜が見えた。
それに加えて、あの子も。
遅れてしまったようだ。
一応謝罪しておいたが、あの子自身も早く着きすぎたようだ。
「綺麗だよね。」そう言って視線を桜に戻すあの子。
「そうだね。」少し散っている桜を取りながらぼくは言った。
その後は、最近のことなんかを話していた。
色々なことを話して、あの子に暗くなったら心配されるよ?と言われ帰ってきた。
「ただいまー。」と、少し気の抜けた声が出た。
返事はなかった。ジャーッと音がするし、大方皿洗いをしてて聞こえないのだろう。
そのまま部屋へ向かう。
ー楽しかったな。
と、今日取ったばかりの写真を見ていた。
「...あれ?」ふと数枚の写真を見て思った。
ー何で傘も何も持っていないんだろう?
『今日は雨が強かった』のに。
最初のコメントを投稿しよう!