1人が本棚に入れています
本棚に追加
崎山加代の場合
早く帰らないと、家路を急ぐ
さっきから、携帯の着信が、
ひっきりなしに鳴っている。
メールも、同様に、何十件ときている。
あの人の機嫌が悪いんだ。
覚悟を決めて、帰らないと
まだ日にちが、浅い傷跡が
ズキズキ痛み出す。
あの人は、普段は、優しくて
とても良い人なのに
機嫌が悪くなると、
周りのものに、当たり散らすようになって
わたしにも、手をあげるようになった。
その時のあの人の眼は、ただ、氷のように、冷たくて、表情のない、悪魔のようだ。
私が、出かけるときは、逐一、連絡を、
しないといけないけど、今日みたいに、
連絡が、出来ない日は、最悪だ。
わたしは、いつかあの人に、殺されてしまうのだろうか。
あんなに、愛した人が、悪魔のように
感じるのは、私が、おかしいのだろうか。
また電話の着信がなる。怖い!怖い!怖い!
勇気を振り絞って、出た。
電話の向こう側から、冷めたあの人の声が、聞こえてくる。
「何で、電話に、出ないんだ?仕事は、5時に終わったはずだろう?」
あの人の声を、聞いて、心臓が、ばくばくしている。
何か言わなきゃってわかるけど
声が、詰まって、出てこない。
すみません。すぐ近くにいますので
「早く帰ってこい。5分待ってやる。一分でも、遅れたら、わかるよな?」
冷や汗が、出てきた。
はい、わかりました。急いで帰ります。
震える手を、抑えて、電話を切る。
私が、遅れたから、悪いんだ。
あの人は、たまたま、機嫌が悪いんだ。
最初のコメントを投稿しよう!