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「あ、椿原も友達待ってんの?って、寝てるし...」
「うーーん...大丈夫。寝入る直前だったから。私はバレー部の亜香里待ってる。桜木くんも誰か待ってるの?」
「うん。今日からバスケ部の高野待つことになったから」
「ふーん。桜木くんもバスケやってるイメージあったけど、違うんだ」
「1年の頃から帰宅部だけど」
「へえ。私も」
「時給がいい建設現場で夜のバイトしてるから、部活で体力消耗するのが嫌で入ってないんだ」
「そうなんだ。ご苦労さま」
「その言葉だけで今までの苦労が報われたわー」
ご冗談でも嬉しいお言葉です。
...ん?じゃあなにかい?今日から高野くんを待つことにしたってことは、私と一緒にイケメン王子も今日から待ち人と化すってわけ!?うそ。まじで!?!
二人だけの放課後パラダイスにようこそおいでくださいました!!いやいや違う。あなたが作り出してくれた放課後パラダイスへ私が編入させていただきます!!
「ここっていいよな。あったかくてほっこりする。俺このへんの席になりてーわ」
「それ私も願いたい」
私、椿原美月(ツバキハラミツキ・17才)は、ここ最近同じクラスの親友亜香里を待つという名目で、放課後教室で待ち人と化す。
ぽかぽかの夕日を惜しみなく浴び、自分の席ではない窓際の机に突っ伏して、さあ今日も眠りにつくのだろうと思っていたら...。
クラスの人気者イケメン王子、桜木遥陽(サクラギハルヒ・17才)に声をかけられ、夢と現実の狭間にいた自分を現実世界へと引き戻した。ひょこっと顔を上げてブサイクな寝惚け眼を擦りながら声の主を見上げた。これこそ本当の夢なのでは?と錯覚し、急激に眠気が吹っ飛び有頂天になる始末。
まさか桜木くんに話しかけられるなんて思ってもみなかった。高2になって初めて同じクラスになったけど、私の過去の記憶を辿ってみても、桜木くんと会話という会話をした記憶など残ってやしない。挨拶程度なら何度かあっても、彼のキラキライケメンオーラが幾分か邪魔をし、私ごときが話なんてできる分際ではございません...と、消極的になるのだ。
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