王子と眠り姫

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後ろの席に自然と座る桜木くんも、数分前の私の如く、机に突っ伏して顔を隠す。 「椿原ってさー、いつも眠そうだよな」 やっぱバレてるか。仕方がないのですよ。毎朝早起きして家の花屋の手伝いして学校に来てるからさ。 「へへ。眠り姫って呼んで」 おっ。我ながら親しくなれるきっかけ作ったんじゃない?あだ名に”眠り姫”を希望するなんてセンスの欠片もないけどさ...。 「わかった。姫にする」 ん。”眠り”を削除しただけなのに、なぜだろう。”姫”って呼び名、なんだか愛されてる気がして、幸福感でいっぱいになってしまうのです。なんとおめでたい簡単女なのでしょう。 「くすぐったい」 「は。何それ。お前結構おもしれー」 これがしばらく続く甘い放課後の始まりだった......ーーーー。 ーーーと、一日目のラストはこんなものでは終わりません。というか、終われない。 このあと、素敵なイケメン王子が後ろにいるというのに、凝りもせず私は再び眠り姫と化しました...。 そして。なんと、本日2度目の夢と現実の狭間をさまよっていた時のこと。私の耳元で桜木くんがそっと囁いた。 「姫の寝顔、すげーかわいいよ。じゃあまた明日」 それは桜木くんからの呪文の言葉なのかもしれないと思った。なぜならその囁きを聞いた途端、心地よく眠りの世界へと誘われて行ったのだから...ーーーー。
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