誰もいない放課後ーー最高級の言葉ーー

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ここで否応なくいつもの睡魔到来。 そして、いいタイミングで桜木くんがまたもや魔法の言葉を私の耳元で囁き、私はすぐさま意識を手放した。 「姫。俺を好きになれよ」 昨日の『姫の寝顔、すげーかわいいよ』ーーーーに引き続き、すごく嬉しい言葉だった。いや、あの言葉以上にドキドキした。 桜木くんは魔法使いでも催眠術師でもないだろう。きっと眠気が限界ギリギリのところでタイミングよく桜木くんからのときめく言葉を貰い、安堵の思いで眠りの世界へと旅立つから、魔法の言葉だと錯覚したのだ。だけど、睡眠導入へのきっかけをくれるその言葉を”魔法の言葉”と言っても過言ではないのでは? ところで、『姫。俺を好きになれよ』ーーーー だなんて、からかいではなく本心ですか?なんて、聞ける度胸はありません。 ごめん、からかいました。って言葉が返ってくることを妄想しただけで、ショックで落ち込んでしまうのです。 そして昨日に引き続き、私が目覚めると、桜木くんの姿はもうなかった。先に高野くんと帰ってしまったのだ。 『姫。俺を好きになれよ』ーーーー ...もうとっくに好きですよーだ。 そんな言葉を桜木くんに告げてもいいのだろうか。 こうも考えられないだろうか。普通ならあんな嬉しびっくりな言葉をいただくと、逆に起きてしまうはず。一人起きてて手持ち無沙汰になり、退屈すぎた桜木くんがわざと心にもない嬉しびっくりな言葉を私の耳元でいやらしく囁いて、起こそうとした策なのでは? 期待に添えず、私はそんな嬉しびっくりな言葉をいただいても逆効果だった。嬉しさで安堵し、ふっと意識を手放す体質だったため、幻滅したのではないだろうか。 今日もう一度甘い言葉を耳元で囁くと、私がまた意識を手放すかどうか確かめたのかもしれない。 そして、王子は明日以降の放課後、私とともに待ち人と化すことはもうないのかもしれないーーーー。
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