ときめきゼリフに惑わされてます!!

2/3
前へ
/14ページ
次へ
「え。来た」 「は?来るよ。当たり前じゃん」 なぜ当たり前? あー。高野くんを待たなきゃいけないからか。 予想に反し、桜木くんは今日の放課後も、私と一緒に待ち人と化す予定らしい。 桜木くんはいつものようにスマートに席に座り、欠伸をしながら机に突っ伏した。 んん?今日はどうしたのだろう。...いや、いつも夜間のバイトに勤しんだのち、睡眠不足のまま登校を余儀なくされるため、体力は限界だろうから仕方がない。 いつもはたまたま私が先に睡魔に襲われるけれど、桜木くんが先に意識を手放してもおかしくない状況なのだ。 「眠すぎて死ぬ...」 むにゃむにゃと呟く桜木くんに、でしょうね。と冷めた言葉を言いそうになるも、なんとか口から飛び出さないように固く口を結んだ。 しばらくすると、スーという寝息を立て始めた。 その瞬間、最高に素敵な言葉を今日は聞けないのかと落胆する私。 あ!ならば私が桜木くんの耳元で、愛の言葉を囁きましょうとも!!と、意気込んで耳元に近づくとーーー。 「俺...」 「わっ」 寝言??微動だにしないけれども...。 「気配とか少しの物音でも起きちゃう特技もってるんだけど...」 桜木くんはようやく顔を上げ、不機嫌そうにそう訴えてきた。寝言ではなかった...。寝入ってたと思ったのにな。 少しの物音でも起きちゃうっていう特技のことだけど、自慢できるようなことではないような...。 「珍しいね。眠り姫が寝ずにゴソゴソしてるなんて」 「こんな希な日もあるのですよ...」 「なぜ棒読み...」 今日は私が”逆囁き”をしてみたかったという事実を告げる勇気はなかった。 私はおずおずといつもの席へと座り直した。 その時だったーーーー。 「姫、いつもその席座るよな。この席と交代しない?」 「えっ?...いや、ここはね、放課後の特等席だから譲れないよ」 何それ。意味不明だし、説得力にかけてんじゃん...。 「ここでもいいじゃん。一つ席が前後しただけじゃあんまり変わらなくない?」 「微妙な違いに気付くんですよーだ」 ますます厳しい......。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加