花運ぶねこ

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花運ぶねこ

坂の上の花屋に、毎月同じ日に花を買いに来る女性がいた。 とてもおしゃれな人で、歩く姿は貴婦人のようだった。 名前は岑子さんといって、オープン当初からの常連さん。 花が大好きな人で、玄関に欠かさず飾る旬な花を買いに、いつも旦那さんと二人で買いに来てくれた。 けれど、旦那さんが亡くなってしまい、今度は変わった連れと一緒に来るようになった。 それは、竹丸という名の若い三毛猫。 岑子さんの後を、必ず竹丸がついてくる。 岑子さん曰く、旦那さんが亡くなった二か月後に、突然庭に現われたという。 人懐っこい竹丸だが、気ままな性格で部屋で飼おうとしてみても、器用に襖を開けて外へ出ていってしまうという。 けれど、決して遠くには行かず、家の周りにいるという。 寝床は軒下がお気に入りだそうだ。 そんな性格も旦那さんに似ていた事から、名前を旦那さんから一文字とって竹丸にしたそうだ。
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