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毎月同じ日に花を買っていくのは、その日が旦那さんの月命日だから。
「あの人はお花が好きじゃなかったの。だからね、あの人のお墓に鮮やかな花を供えているの。だって、先に死んじゃうなんてずるいじゃない? だから、これは私の意地悪なの」
そう言って、岑子さんは笑う。
岑子さんと花を用意しながら世間話をしている時も、竹丸は大人しく待っている。
リードをつけていなくても、岑子さんが出掛ける時には必ずついてくるという。
竹丸は私達の会話を聞いているかのように、毛繕いをしながらも耳を小さく動かしている。
そして、しばらくすると決まって竹丸は赤い花の前で鳴く。
花の種類は色々だけれど、決まって色は赤い花。
その一本の茎を短く切って竹丸に渡すと、器用に口に咥える。
竹丸は、その花を旦那さんの仏壇に供えるという。
「あの人の好きな色なの。会った事もないのに不思議ね」
と花束を抱えて岑子さんは笑い、竹丸と一緒に帰って行く。
とても微笑ましい光景だ。
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