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アパートの一室は散らかり放題で、ひどく荒れていた。
その部屋の中央に、真っ赤な髪の青年がひとり。髪を染めたばかりなのか、手も真っ赤。
「あー……あーあーあー!クソッタレ!」
青年は手元にあるものをいくつか投げると、横を向いた。
そこにあるのは鏡。病的なまでに濃いクマ、真っ白な肌に目立つそばかす、そして真っ赤な髪の青年が鏡に映る。
「ふっはは!ハロー、モンスター。そちらの天気は今日も雨かい?」
青年は鏡の自分に手を振ると、フラフラしながら立ち上がる。
壁に貼ってあるポスターにはブレザー姿の少女。その少女は高校時代、青年と同級生だった子で、青年が密かに想いを寄せていた。
青年は彼女を盗撮し、それをポスターにしたのだ。
「てかさ、てかさぁ?お前、死んでんじゃね?あっはは、ご愁傷様!クソビッチ!」
青年はポスターの少女を殴ると、脱ぎ捨てた服の山に座る。
「はーぁ……最悪!最悪最悪最悪!」
青年はそう叫んで寝転ぶ。しばらくうーうー唸るが、目を見開いて起き上がる。
「そうだ!気分が悪いのは悪いのは!どこか悪いからなんだ!どこか悪かったら、お薬を飲もう!」
青年はポケットからピンク色の薬を出してコーラで流し込んだ。
「ふぃ~、げぷ!」
青年は座ったまま、体を大きくゆっくり揺らした。かと思えば突然立ち上がり、先程の少女のポスターにすがりつく。
「ああ、メシア様!愛しの愛しのメシア様!恥ずかしがらないでここから出てきていいんだよぉ?そしたらたっぷりの、た~っぷりの愛を注いであげるのに……」
青年は目を閉じてポスターに頬を寄せたまま、停止する。
しばらくして青年は目を開ける。彼の視界に飛び込んできたのは整髪塗料で赤く染まった自分の手。
「ひぃっ!?あー!!!誰だ!誰の血だぁ!?あー!俺じゃない俺じゃない俺じゃない!俺は誰も殺してない!」
青年は両腕をブンブン振り回して暴れる。
何かにつまづいて転ぶと、彼はしばらく無言でじっとしていた。
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