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牛飼い童犬丸の話
俺が弾正の宮さまに気に入られてお歩きにお供するようになったのは、まだ14才かそこらの頃だった。常に宮様のお供をすれば貴顕のところへいく機会も多く、そうなれば出世の緒もたくさん転がっているというわけで、この大抜擢をやっかむものも多かったが、俺にはさっぱり自分が選ばれた理由がわからなかった。
宮様に伺ってみると、なんでも清少のオバサンが俺が好もしいと言って褒めてくれたらしい。
弾正の宮様はお背が高く端正なお顔で朗らかに笑い、冗談ばかり言って、いつも春の陽射しのように側に侍るものの心を温かくする方だった。でも誰にでも欠点というのはあるもので、宮さまはそれは好き好きしい方で、通い所もかなり控えめに言っても片手では足りないほどだった。
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