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そういうと文を結びつけた先程の枝を渡され、わたしの頭を軽く撫でられた。
それから、「さあ、犬丸、戻ろうか。あまり長居をして浮ついた男という噂が流れても困る」、と牛飼い童に声をかけて牛車のなかに姿を隠してしまわれたのだった。
牛飼い童はわたしのほうをちらりとみると、にっと笑い、それからもうまるでわたしのことなど目に入らぬ様子で牛を車に付け始めた。
その後、いくばくもなく江の御方は|新しい情人、帥の宮敦道親王をお通わせになり、口うるさいあたりからまたあれこれと本意ないことを言われることになったとは、幼いわたしは知るよしもなかった。
そしてこの牛飼い童がわたしの夫になることも。
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