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初恋
私がひそかに思いを抱いていたのは幼馴染のタクミ。
小学校から中学にかけてサッカーをしていた彼は高校に上がる頃になるとクラスの女子の間でも人気があった。
おそらく付き合いたいと思っている女子はたくさんいただろう。
私とタクミは実家が近い事もあって幼い頃から何かとつるむ事が多かった。
とはいえ、あまりに長い付き合いだったため、今さら恋の相手として見てもらえる自信もないし、幼い頃から抱き続けた私の思いはずっと心の奥底に閉じ込めたままだった。
しかし、そんな私とタクミとの関係は周りの女子生徒たちの目に、さも恋人同士のように映ったのだろう。
入学して早々、家までの道を一緒に歩いているのを見た同級生たちから冷やかされた。カップルのような扱いを受けることにお互い免疫がなかった分、軽く流す事も出来ずに、
「ばか、そんなんじゃねーよ!腐れ縁みたいなもんだ。」とムキになって否定するタクミに私も乗っかる形で否定した。
「幼馴染ってだけで、そんな恋人みたいに言わないでくれる?」
タクミは私の事はなんとも思っていない。
この想いを口にしたら、今の関係すら崩れてしまう…。
小さな胸の痛みを隠したまま。
勘違いした同級生や先輩たちの冷たい視線に耐える学生生活が始まった。
彼の方はと言うと、相変わらずモテていたようで、体育祭や文化祭、クリスマスといったイベントの際には必ず女子から声がかかっていた。
先輩たちの陰湿ないじめにあっていた私は、彼にその事を相談することもなく、ただひたすら我慢していた。
彼に恋人ができたら、私に向けられた矛先もおさまるのだろうけれど…
…彼に恋人が…?
それは私が最も恐れている事だった。
でもそれを受け入れなくてはならない日がやってきたのは、高校1年の冬、バレンタインデーの翌日の事だった。
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