20人が本棚に入れています
本棚に追加
いつもと同じように帰りが遅くなった私は目の前を歩く二人の人影を見つけた。
見慣れたタクミのシルエットと女子生徒の後ろ姿…。
時折見える横顔は以前に私に見せていた少年のような笑顔だった。
自宅の方向が一緒だという事はこういう時に逆に困る。
見えなくていいものまで見えてしまうから。
結局、二人を数百メートル後ろから尾行しているようなもので、居心地が悪かった。
私は二人に気づかれる前に、通学路にある書店へと逃げこんだ。
しばらく店内をウロウロして新しい本を見てみたが、内容は頭に入ってこない。
タクミにも恋人ができた…。
この事実が私の思考回路を完璧にストップさせていた。
タクミは、うまく彼女の存在を隠しているようで、学校で彼の恋の噂は全く流れなかった。
私が見かけた時も帰宅が遅かった時間だし、そういう時を利用して純粋な恋愛をしているんだろう。
だから、一ヶ月ほどたったある朝、タクミに呼び止められたのは意外だった。
「よぉ!」
いつもは部活の朝練習があるとかで早くに学校に行く事が多いので、私より後からタクミが追いついて来る事はなかった。
ところが、この日は歩いていると、後ろからタクミに声を掛けられた。
最初のコメントを投稿しよう!