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「違いますーだ なんか突然寝ちゃったみたいだからせめて寝るなら保健室で と思って この子すごく軽くてびっくり」
空いていた窓側のベッドに彼を下ろし、布団をかけ そのベッドに私も腰を降ろす
外では野球部が部活を行なっていた
「突然?物理的に寝かせたのかい?」
「違うわ!なんかすごい荒い呼吸してて。酸素が一回の呼吸じゃ足りないみたいな うーん あ すごい苦しそうだったの 胸に手を抑えてて」
「ふむ...」
優希さんは席を立ち、こちらに向かう
何やら神妙そうな表情で彼を見つめていた
「断言は出来ないんだけどね 過呼吸かもしれないね この子」
「カコキュウ...?」
別に医者を目指してる訳でもない私にその言葉の意味は理解出来なかった
「簡単に言えば思い詰めつぎて ふと呼吸の仕方を忘れちゃうんだよ いつもの呼吸が出来なくなる だから短期間で非効率な呼吸をする ま あくまでも可能性だけど」
産まれた時から無意識と言っても過言ではない呼吸を忘れる事が私には理解出来なかった
そこまで彼が切羽詰まってる事なんて考えられなかった いつもにこやかに挨拶し、人から親しまれてるのに 悩みなんてない人だと思っていた
「強がってるんじゃない?この子人に頼る事の出来ない不器用っ子 この子友達いる?特定の誰かといる所見た事ある?」
「いないわけ....」
はっと口を紡ぐ そう言えば彼が自分の話をしてるのは聞いた事がない
いつも誰かしらの相談を聞き入れて自分の事のように頑張る君だけしか
ふと優希さんの予想が当てはまっている事に気づく
彼は無理してるんだって 背伸びしている事に
「人は背伸びをする 良く見られたいからね ただ背伸びには限界がある その限界に来た時 少しでも衝撃が来ればすぐに壊れてしまう だから真緒ちゃんも程々にね」
私も多少はしているけども カコキュウになる程彼は積み上げていた
心が締まる ただ苦しかった
「ん...ぅ...」
小さな声がベッドから聞こえる どうやら彼が目覚めたようだ
「だい...じょうぶ?日向君」
身体をゆっくりと起き上がらせる彼はあたりを見渡す どうしてここにいるのか理解出来ていないようだった
「よく眠れたかい? たまにはサボってみるのもいいだろう?」
まるで彼がサボったかのような言いようで優希さんは笑顔を見せる
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