第三話 袋

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「3匹目が、3匹目が出てくるのよ、カエルが、彼の赤ちゃんがここから、私の袋から出てくるのよ、オギャー、オギャーって出てくるのよ、ふへっ、ふへへへっ、ひっひひひっ、ひーっひっひっ、出てくるの、3匹目が、出てくるのよ~~~ 」  完全に正気を失った目をして自分の下腹部にフォークを突き刺していた。  手術室に運ばれていく恭子を哲也は呆然と見送った。恭子の流した血の跡の中に小さな手足の形をした物が部屋の床にいくつもあったのを発見したからである。  恭子を見たのはそれっきりであった。  緊急手術で一命は取り留めたものの意識が正気に戻らなかったのである。まともに会話さえ出来ない状態だと聞いた。  彼女は隔離病棟の中でも重度の患者が入る24時間監視付の部屋へと移された。  急に彼女の状態が悪化した原因が分かった。  彼女は妊娠していたのである。相手はあの看護師だ。彼は彼女の話を聞いて同情した。なにかれ世話を焼いてくれる彼に恭子も惹かれていった。  2人は病院内で愛を育み恭子は退院したら結婚をすることも考えていた。  しかし彼は逃げた。恭子の病状が悪化したからではない、妊娠していることに気付いたからである。彼は遊びだった。初めから結婚する気などは無かったのだ。  哲也は後悔した。     
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