第一話 安心毛布

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第一話 安心毛布

 哲也が吉田と知り合ったのはバイトを始めて間もなくの頃だ。  吉田徹(よしだとおる)さんは磯山病院に入院して間もなく1年経つという、歳は哲也より2つ上の21歳である。  親戚に勧められて磯山病院に来たと言う事だ。  歳が近いせいか直ぐに親しくなった哲也が話を聞くと幻覚を見るらしい、幼い頃から幻覚を見ていたがお婆ちゃんが助けてくれたので怖くはなかったと言い、今も御守りだと言って亡くなった祖母が作ってくれたボロボロの毛布を大事そうに抱えていた。  毛布を取ると錯乱して暴れるので持ち歩くことは先生が許可している。  哲也も毛布を見せてもらったことがある。  ボロボロの毛布に開いた穴から何やら梵字のようなものが書かれた布切れが織り込んであるのが見えた。  吉田さんはこれがお守りなのだと言っていた。  いろいろな幻覚を見てきたとの事である。  山で鎧武者が刀を振りかざして追いかけてきたりトンネル内で車の窓ガラスに頭が崩れた女の人がへばりついていたという具合にいろいろだ。  吉田さんはお婆ちゃん子でその都度祖母が助けてくれたのだと言っていた。  これはそんな吉田徹さんから聞いた話しだ。     
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