第三話 袋

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 花瓶を割ったあの日に見た小さな手形みたいなもの、あの時部屋を探せば看護師にも見てもらえたかもしれない、そうすれば恭子の話しも少しは信じてもらえたかもしれない、あんな目に合わなくても済んだのかもしれない。  女性の持つ子宮という袋が彼女に幻覚を見せたのだろうか? 堕胎したことによる後悔の念だろうか? 一旦治まったものが妊娠と言う出来事がスイッチとなって再度幻覚を見るようになったのだろうか? 哲也には分からなかった。  袋は入れ物、いろんな物を入れる袋、だけど入れるだけじゃない出すのである。出てくるのだ。もしかしたら入れた覚えの無い物が出てくることがあるのかもしれない、哲也はそう思った。
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