プロローグ

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 中田哲也(なかたてつや)は磯山病院でアルバイトをしている。  病院のアルバイトと言ってもただの警備員だ。医学生ではなく普通の大学生である。  磯山病院は怪我や病気など目に見えるものを扱う一般の病院とは違い、目に見えない心というものを扱う心療内科の病院である。  哲也の住む町は都会ではない、周りを田畑に囲まれ近くに山々がある田舎だ。  磯山病院は町から少し離れた山の中にある。  自然に囲まれた山の中で安静に治療できるという事もあるが近隣住民たちとのトラブルを避けるためと言うのが本当のところだ。  専門だけあって病院の規模は大きなもので大学病院規模の本館に別館があり入院患者の病棟も普通のものが10つに重症患者用の隔離病棟が3つもある。  専門の医者にカウンセラーがいるのはもちろん、施設も整っていてトップレベルだ。  これだけの規模であるから全国から患者が集まってくる。  患者には本当にいろいろな人がいる。  よく聞く総合失調症や気分障害を患っている人はもちろん、脳器質性障害などと難しい病名を医者からよく聞く、患者から話を聞く機会もあるが病んだ人からよく聞く誰かに監視されている話や電波を送ってくるなどという話とは違う話をする人がいる。  先の人たちの大半が何度も聞くと辻褄が合わない事だらけなのに対して何度聞いても話の辻褄が合いまるで事実であるかのように突拍子もない話をする人たちがいる。  哲也は時々思う、この人たちは本当に心の病気なのだろうか、もしかして......。
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