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「さすがに怖くなって、慌てて甥の手を引っ張って帰ったよ」
そう言ったダチの顔が俺は忘れられなかった。
蒼白で、なのに目だけがぎらついていて、恐怖だけでなく、他のなにかを得たような、そんな顔つきをしていた。
それからほどなくして──
「え? あいつ、いなくなったの?」
別のダチから、廃屋でのことを話していたダチが行方不明だと聞かされた。嘘だろう? なんであいつがいなくなるんだ。
まさか、幽霊の仕業なのか?
いや、行方不明なのだからあの話とは関係ない。そのはずだ。だって、廃屋に入った奴らはみんな倒れている。
しかし、どうしてだか俺はあの廃屋のせいなんだと脳裏でぼんやりとだが確実に解っていた。
あのとき、話を聞いた去り際にあいつは、
「なあ、あそこには絶対に近づくなよ。青い炎が迎えにきちまう」
ダチの目がそのとき一瞬、真っ黒になった気がした。
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